2017年3月27日月曜日

FOSTEX(フォステクス)ヘッドホンTH610のレビュー!NW-WM1Zにバランス接続し評価します。

FOSTEX(フォステクス)
プレミアム・リファレンス・ヘッドホン TH610
数十年ぶりに、ヘッドホンを買いました。実は、私は基本的にイヤホンが好きなのと、頭の髪が”ペタッ”となるのが嫌で、今までヘッドホンは絶対に買う気がなかったのです。しかし、ウォークマンNW-WM1Zを手にしてからは、「一度はヘッドホンで聴いてみたい!」と思うようになりました。

購入するにあたっての条件としては!
NW-WM1Zにバランス接続できること
(これが最も重要な第一条件
ドライバーが1テスラ以上
AK T8iEでテスラの虜、1テスラだから良い音とは限らないのですが
5万円前後の物
(使わなくなったら高級品は無駄になるので、お高いSONYのMDR-Z1Rは要らない。でも、5万円程度で最良の音が欲しい。メーカーは問わないが出来ればカッコいいの
低インピーダンスでハイレゾ対応
(数曲しかハイレゾ音源は持ってないんですが、ハイレゾ対応周波数は必須です!。また、NW-WM1Zのアンバランスでも聴いてみたいので低インピーダンスがありがたい)
密閉型
(閉ざされた空間の中で音楽に没頭したいので

と言った所です。
そして、この条件に合ったのが「FOSTEX(フォステクス)のTH610」です。購入にあたって色々ネットで評価を探したのですが、情報があまりなく少し不安でした。ただ、フォステクスはアンプを昔から使っているのと「ハウジングが黒胡桃無垢削り出し」と言うのに引かれたので購入しました。


FOSTEX(フォステクス)
プレミアム・リファレンス・ヘッドホン TH610
黒胡桃無垢削り出し材を採用したハウジングとバイオダイナ振動板の共演による、艶やかで自然な響きを紡ぎ出すハイクオリティモデル。

●粘りのある高級黒胡桃無垢削り出し重硬材を使用。美しい木目を活かし、艶やかな響きを 実現。
●磁気回路は、磁束密度1テスラの50mm ドライバー・ユニットを搭載。超強力磁気回路により低歪率で広大なダイナミックレンジを提供。
●振動板には弊社独自開発のバイオ・セルロース技術による「バイオダイナ」を採用。豊かな超低域、素直な中域、そして、特にプレゼ ンスに優れた高域を再生。
●内部パーツに、アルミニウム/マグネシウムを多用し、高い質感と軽量化を実現。バッフル板には高比重型樹脂を採用する事で、共振音の発生を低減させ、高い解像度と豊かな中域、良質な低音再生を実現。
●デタッチャブル・コネクタ・ポートを装備。ケーブル側端子とヘッドホン本体側の着脱 部接点端子には、硬度が高く耐摩耗性、耐食性 に優れたロジウムメッキ処理を施し、信頼性を向上。
【仕様
形式:密閉ダイナミック型
磁気回路:磁束密度1T(テスラ)
ドライバー:Φ50mmネオジムマグネット/バイオダイナ振動板
インピーダンス :25Ω
再生周波数帯域 :5~45,000Hz
感度:98dB/mW
最大入力:1,800mW
本体質量:約375g(コード含まず)
ケーブル:3m Y型 純銅製( 着脱式コネクタ端子:2ピン、ロジウムメッキ仕様)
本体側着脱部:2ピン(ターミナル:金メッキ下地 ロジウムメッキ仕様)
プラグ:直径6.3mm 金メッキステレオ標準プラグ
付属品:レザー調ポーチ
別売の交換用バランスケーブル「ET-H3.0N7BL」でバランス接続に対応

詳しくはメーカーホームページを確認してください

FOSTEX(フォステクス):1949年創業の日本の音響機器メーカーでフォスター電機(株)のブランド名です。スピーカーやヘッドフォン、マルチトラックレコーダーやDTM関連製品を造っている。
黒胡桃(クログルミ・くろくるみ)ブラックウォルナット:ブラックウォルナットは強度が高く、粘りもあり、対衝撃にも強い特徴を持つ、ギターなど楽器の素材としても使われています。
無垢:合板や集成材ではなく、使用する形状で丸太から切り出した木材



TH610とORB Clear force到着
TH610の箱の上の方が汚れているのかと思ったら、そういう写真でした


 TH610本体の開封
外箱の中にはシンプルでお洒落な化粧箱が入っています。いつもイヤホンの箱しか見てないので、やっぱりヘッドホンの箱はデカいです。

ヘッドホン本体、アンバランスケーブル、袋などが入ってます。

シンプルで美しいです。

ハウジングの黒胡桃の色は予想よりもチョコ色で素敵です。下手な艶出しはなく素材の表情を生かしています。

フォステクスのロゴ、FOSTEXのヘッドホンって知っている人っているのかな?

思ったより軽いです。黒胡桃は堅いのに軽いです。

高さ調整スライダー


コネクタ(メス側)実はこの2ピンコネクタ、ケーブルも含め初めて見ました。


当然ですが右と左で木目が違います。世界に二つとして同じものが無いのです。どちらの木目も素敵です。10年くらい使ったら更に良い色になるかなぁ~楽しみ!


接続(アンバランス)
2ピンコネクタを接続


聴いてみる(アンバランス)
まずアンバランスに接続。6.3㎜コネクタを3.5mmに変換してNW-WM1Zに接続。

アンバランス接続
ボリューム:78
エージング:0時間

音場:横方向に少し
音圧:スカスカではないですが、グッとくる迫力もない
解像度:マズマズです。繊細な余韻までは出てません
ボーカル位置:目の前
ボーカル:良く出ている。
高音域:良く出ている少し刺さる
中音域:良く出ている
低音域:普通(ウッドなのでもっと出るかと)
打楽器:もう少し切れが欲しい
弦楽器:綺麗です
打込み:綺麗です


アンバランスで聴いた感想ですがちゃんと鳴っているし、純正のケーブルの出来も良いと感じました。太いケーブルは伊達じゃないのです。ただ、やはり音に深い感動はなくNW-WM1ZのアンバランスでTH610の本気の音を聴くのは難しいと感じました。なのでアンバランスでの感想はここで終了!





接続(バランス)
TH610のケーブルは2ピンとなっています。結構な金額ですが、SENNHEISER ( ゼンハイザー ) HD650向けのORB Clear forceバランスケーブルが使えそうなのでリスク覚悟で買ってみました。

オーブ ヘッドホンリケーブル(1.2m)【HD650用プラグ⇔4.4mm5極プラグ】
ORB Clear force HD650 CF-HD650 4.4 1.2M

バランス4.4㎜5極ケーブル高いです。中級クラスのイヤホンが買える金額です。

2ピンのコネクタ、見た目が意外とチープ。

太いケーブル弾力があり丈夫なケーブル
コネクタは一応入りますが奥まで入らず、ポロっとすぐ抜けます(涙
2ピンの接続方法は、両ピンの真ん中あたりに凹みがあり、この凹みが本体側の穴に入り「カチッ」と引っかかって止まるようになっているのですが、写真の部分が有るが為に奥までピンが入らず凹みが引っかからず抜けるようです。なので、写真の部分を少し削ってもう少し奥まで入るようにします。
今度は「カチッ」とシッカリ止まりました。

聴いてみる(アンバランス)

バランス接続
ボリューム:78
エージング:0時間

音場:全体的に少し広い
音圧:シッカリとした音圧です。ズンと来ます
解像度:高いです。余韻の最後までスーッと聴こえます
ボーカル位置:目の前
ボーカル:良く出ている。特に女性ボーカル美しく安心した
高音域:繊細に良く出ているが、少し刺さる
中音域:少し出すぎくらい良く出ているが、少し刺さる
低音域:楽曲によって低音の出方が違う
重低音:なんか低音の後ろにもう一つ低音がありそう!
打楽器:良く弾けている。切れも良い
弦楽器:特にギターやピアノなどアコースティック楽器が美しいです。ただ、少し刺さります。
打込み:良い音です。意外にシッカリ出てます。

バランス接続で、一つ残念なのはケーブルがORB Clear forceと言うことです。イヤホンでも使っているのですが、クールで中高音域の音が硬いORB Clear forceは個人的にはあまり好みではありません。出来るならばキンバ―ケーブルで試してみたかったです。


★エージング0時間での感想
音の周りに一皮あり、解像度は高く音の余韻もしっかり聴こえるのですが、深みや透明感に欠ける感じです。意外にも低音が少し大人しく中高音域が元気です。現状中高音は少し刺さり気味です。低音域の音圧や切れがもう少し欲しいのと、全体的に抜け感が欲しいと感じました。(密閉なので仕方ないですが)ただ、ヘッドホンはあまりにも久しぶりなので2時間も聴いていると空気の振動や音の刺さりで耳が疲れました。取りあえず50時間くらいはエージングをしようと思います。楽しみです。






バランス接続
ボリューム:80
エージング:約20時間

音場:決して広くはないですが感じのいい広がりです(音場は使うケーブルの特性に寄る所も大きいです。純正アンバランスケーブルよりは広がりがあります)
音圧:刺さりも取れ、音圧も安定してきたせいかボリュームを少し上げた方が良くなりました。
解像度:輪郭もシッカリしてきました。音の細部まで見通しが良くなってきました。
ボーカル位置:目の前から少し下がり楽器の上あたりで聴こえます。
ボーカル:女性ボーカルが更に美しくなりました。
高音域:刺さらなくなってきました。NW-WM1Zの柔らかいキラキラ感も少し表現出来た気がします。(キンバ―ケーブルでないのでこの辺が限界かも)
中音域:刺さらず自然な中音域になってきました。
低音域:楽曲によって違うが、切れ良く出ている
重低音:楽曲によって重低音が少し出てきました。
打楽器:深く切れの良い音です。
弦楽器:ギターやピアノが更に良い音に。
打込み:良いです。疲れません。


★エージング約20時間での感想
一皮が取れました。深みや透明感がでてきました。全体的に刺さりもなくなり、角が取れてきたので音に没頭できます。楽曲によって低音も高音もシッカリ出ますが、基本的には中音域が少し強いカマボコ形状だと思います。高音域がキンキンしない繊細な音は「クルミハウジングの効果なのかなぁ~?」と思う次第です。
また、バランスケーブルORB Clear forceのエージングも進んでいる様でクリア感はそのままに音の硬さが取れた感じもします。でも、惜しまれるのはやっぱりキンバ―ケーブルです、TH610をキンバ―ケーブルで聴いてみたいです!2ピンとMMXCを変換するコネクタとかないかなぁ~








バランス接続
ボリューム:80~82
エージング:約50時間

音場:6畳間くらいの広さで楽器の位置もシッカリと距離がありボーカルは中心にいます。音の共鳴や余韻は6畳間を超えて更に先の方に消えていく感じです。
音圧:音場が広がると音圧が拡散されボーカルなども迫力のないものになったりしますがTH610は違います。適度な音場あるけれども音圧は下がることなくシッカリとゆとりのある音を出してくれます。
解像度:柔らかくマイルドだけども高い解像度です。古い楽曲ほど良い感じです。
ボーカル位置:ほぼ目の前に安定。
ボーカル:ボーカルの多重や微かなコーラスまで聴こえます。
高音域:NW-WM1Zの柔らかい、音の粒の際立った高音です。黒胡桃ハウジングの効果か、高音域の共鳴がとてもマイルドでN40で聴く高音域とは一味違ったいい高音だと思いました。
中音域:決して出しゃばらないですがキチンと中音域が出ています。なのでN40では聴こえないような中音域のコーラスの声なども確認できます。
低音域:迫力と言う意味ではN40の方が良く出ています。しかし、低音域を前面に出さない楽曲でも地を這うよに渋い低音を確認できます。
重低音:楽曲によって全体を土台で支えるような主張しない重低音が出ています。
打楽器:バスドラの深み抜けやシンバルの繊細な音も確認。
弦楽器:多少こもり気味だった弦楽器も二皮ほどむけた感じです。
打込み:良いです。音のエッジもマイルドで聴きやすい。


★エージング約50時間での感想
今まで聴こえなかった音が沢山聴こえます。TH610はエッジの聴いた鋭いドンシャリ系のヘッドホンでははなく、基本フラットでナチュラル、上品な音を出してくれます。しかし、楽曲によってはそれなりにシッカリなってくれます。バランスケーブルORB Clear forceに関しては、クールなのに柔らかい感じになりました。ただ、現状楽曲によっては高音が多少耳に刺さります。もう50時間はエージングが必要かなと感じています。









バランス接続
ボリューム:78~80
エージング:約100時間

音場:音場が3畳一間くらいに狭くなりました。狭いと言っても聞き苦しい訳では無く、適度な空間とシッカリと楽器の位置を掴むことが出来ます。これはケーブルのエージングの効果も大きく含まれていると思いますがとても良い感じです。また、音の共鳴や余韻は6畳間を超えて更に先の方に消えて行きます。
音圧:音圧も更に安定しボリュームは79辺りで十分聴きごたえがあります。音場が少し引き締まった関係で音圧も上がったのかもしれません。
解像度:耳をシッカリ凝らせば全部の音が聴きとれる気がします。まぁ私の耳ではありえないですが(笑
ボーカル位置:ほぼ目の前に安定。ハスキーな女性ボーカルのロングトーンの最後に、今まで聴こえなかった声帯かすれる様な音も聴こえる。
ボーカル:ボーカルの多重や微かなコーラスま美しい。
高音域:ハイレゾ音源では高音域の空気感を感じます。
中音域:ダイナミック型の性質で当然ですが繋ぎ目のない豊かな中音が全体をシッカリとまとめています。
低音域:深みと迫力が出てきた気がします。
重低音:相変わらず主張は無いですが個人的には好きです。
打楽器:中音域のドラムスの切れも最高です。
弦楽器:更に深みと伸びと切れが出ています。
打込み:良いです。今まで聴こえなかった周波数帯域の音も聴こえている気がします。


★エージング約100時間での感想
いつも使っているAKG N40、AK T8iE MkIIからTH610に変えた場合、不思議なことに全く音に違和感が無いのです。AKG N40もAK T8iE MkIIも大きな癖が無く、NW-WM1Zの音を素直に聴くことが出来ると感じています。TH610はこのAKG N40とAK T8iE MkIIの音に、更に高音と重低音を周りに包み込み、暖か味と深みを加えた様な音なのです。ただ、全体的に、もうちょっと薄い膜があるような気がしてます。200時間後には変わるかな!

周波数特性はそれぞれ下記の様になります
■AKG N40(周波数特性:10Hz ~ 40kHz)
■AK T8iE MkII(周波数特性:8Hz ~ 48kHz)
■TH610(周波数特性:5Hz ~ 45kHz)



SENNHEISER ( ゼンハイザー ) HD650向けケーブルによるリケーブルは、あくまでも個人的な趣味で行っています。もし、リケーブルにチャレンジされる方はあくまでも自己責任でお願いいたします。









【総括】
もう何年も、ヘッドホンで音楽を聴いていなかったのですが、久々に聴いてみるとやっぱり良いものです。どっしりとした、ゆったりとした、スケールアップした美しい音に包まれて聴く音楽はイヤホンでは味わえない感覚です。ただ、頭の髪が”ペタッ”となるので何か対策を考えなくてはなりません。

筐体が黒胡桃と言う先入観からEDMとかは苦手かと思いきや難なく鳴らしてしまいます。TH610は変な癖もなく、どんな楽曲も鳴らしてしまうオールラウンドなヘッドホンだと感じました。また、見た目ほど重くないし、長時間装着していても疲れないし、カラーもデザインもシンプルでお洒落です。

音質について比較対象になる他のヘッドホンを持っていないので、音質の感覚の似ているイヤホンのAKG N40で比較してみます。N40は切れの良い低音域とキラキラと柔らかい美しい高音が特徴ですが、TH610はこのN40の解像度を更に上げ低音域と高音域を一回り広げ、中音域を豊かにし、音場を更に深くし余韻や空気感を更にアップした感じです。
全ての音のバランスも良くアンプの個性をシッカリと表現していると思いました。聴き疲れせずいつまでも聴いていたい衝動に駆り立てられます。NW-WM1Zとの相性も素晴らしいと感じました。

また、テレビ視聴用の「FOSTER HP-A3」やパソコン試聴用の「DENON DA-300USBS」にも純正ケーブルで接続して聴きましたが、綺麗な音がでます。映画などを見る時には大迫力で楽しめました。
FOSTER HP-A3

DENON DA-300USBS



最後に、いとも簡単にヘッドホンを本格的に鳴らしてしまうNW-WM1Zはやっぱり凄いのです。NW-WM1Zはバランス接続時には250mW+250mW(16Ω)です。SONYの人が「バランス接続なら300Ω程度までのヘッドフォンも駆動できる」と、どこかの記事に書いていました。

TH610は「プレミアム・リファレンス・ヘッドホン」というキャッチが付いています。ウッドハウジングから想像するような個性的な音や、低音過多の様な癖は無く、非常にニュートラルな音で”アンプ、プレイヤーの出す音を忠実に再現する方向性のヘッドホン”と言う感じで、まさにリファレンス!NW-WM1Zとの組み合わせはベストと思いました。NW-WM1ZとN40(バランス)の組み合わせで、古~い昔の楽曲が今まで聴いたことのない音で蘇り、大変に幸せになったのですが、TH610ではさらにその傾向が強くなります。その音は、ある時は激しく、ある時は穏やかで、ボーカルは目の前で唄っているかのように聴こえ、吐息まで聴こえて来そうです。
結論としてNW-WM1ZとTH610(バランス)の組み合わせはとてもマイナーなのでしょうが、この価格帯としては不満のない個人的にはベストかなと考えています。永く付き合って行けそうです。